鳥を撮る - (3) 山本 晃


 近寄ると嫌がって逃げてしまうし、飛んでいるのは速いのでファインダーに捉えることさえ難しい。鳥を撮ることなど、やはり常人の踏み込む世界ではないのかもしれません。しかし、さまざまに工夫したり試行を繰り返すうちにうまく撮れたなどということになると、もう病状は回復の見込みがないまでに進行しています。誰彼構わず写真を見せたくなり、反応が芳しくないと、見せた相手の人間性を疑ったりする始末です。

 最近はオートフォーカス(AF)全盛の感があり、必死になってピントを合わせたのは古き良き時代の思い出話になりつつあります。しかしオートフォーカスもオールマイティーとはならず、場合によってはマニュアルフォーカスの方が良いのです。例えば極端なクローズアップの場合、通常の開放絞りでは被写界深度が非常に浅くなります。鳥が斜めに構えていたりするのを中央のAFフレームでピントを合わせると、肝心の目のあたりがピンボケになります。目を中央に持ってくれば良いのですが、構図の上でおかしなことになります。咄嗟にAFフレームを自在に選択できるように練習しておきましょう。動きの速い被写体にも十分追随する最近のオートフォーカスですから、空を飛んでいる鳥を撮るのは楽になりました。手でピントを合わせていた頃とは隔世の感があります。ところが、背景が空のようにノッペリしていない山肌だとか海面のような場合、AFフレームが鳥から外れると背景の方にピントが走ってしまいます。ファインダーに捉え続けるだけでも大変なのに、ピントが後ろや手前に暴走してしまったら肝心の鳥を見失うことになってしまいます。そういう状況では最初からマニュアルでのピント合わせにしたほうが、鳥を見失うことだけは避けられます。しかし鳥を見失わずにファインダーに捉え続けたとしても、ピントが合わせられなければ情けなさの度合いに変わりはありませんので、日頃からオートフォーカスの恩恵にドップリと漬かっていないで、マニュアルでのピント合わせを練習しておくことをお勧めしておきます。いたずらにピントリングを回して合わないピントを空しく追い求めるより、何もしないで撮影する(シャッターは押します)方法があります。鳥が同じ場所を行ったり来たりするような場合、ここぞという場所にピントを合わせておき、鳥をファインダーで追い続けてピントが合った時にシャッターを切るのです。横から狙うならピントの見極めは容易ですが、角度がある場合にはあっという間に合焦位置を過ぎてしまうので、シャッターが切れるタイムラグを考えて少し前にシャッターを切る必要があります。こうなると「数撃ちゃ当る」の世界ですが、オートフォーカスに頼れない特殊な場合には試みる価値はあります。

 鳥の写真など、考えてみれば偶然にかなり支配された世界です。しかし偶然とはいえそれを捉えられるか、うろたえて逃してしまうかの違いはどこにあるのでしょうか。偶然のことでも、ある程度「勘」の持ち込める領域があると思えます。勘の鋭い人は多くのチャンスに巡り合えるのです。チャンスを生かせるかどうか、それは「心掛け」で決まります。



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