鳥を撮る - (6) 山本 晃


 自動車からの撮影が、鳥を撮る際にかなり有効だということは既に述べました。いわゆる動物カメラマンの方々も、アフリカのサバンナなどでの取材では、移動の便利さが優先されるのでしょうが、殆ど自動車からの撮影のようです。もっとも、猛獣の撮影の場合などは、自動車はブラインドというよりはシェルターという性格が強くなると考えられます。鳥の場合は襲われる気遣いはまず必要ないでしょうから、単なる隠れ場所としての目的だけなのです。自動車で行くことが出来ない場合や、自動車に隠れても相手のお許しが全く得られない場合には、撮影を断念するのが嫌ならほかの手段を考えざるを得ません。見つかると嫌がられるから隠れて事を企む。なんとなく後ろめたい感じが拭えませんが、こればかりはどうしようもありません。鳥もいろいろで、最初の頃は嫌がってすぐに飛び去ってしまっていたのが、しつこく迫る内に、かなりの接近を許してくれ始める場合があります。そういう場合は存分に撮れますから、こんなに楽しいことはありませんが、滅多にそういう鳥に出会えないのは残念です。馴れてしまうのでしょうか、それとも諦めてしまうのでしょうか。不思議なことですがそんな経験を何度か味わっています。これが人間の女性に応用できるかどうかは私には分かりません。お試しになられた場合の結果には責任は負い兼ねますので、お含み置き願います。

 ブラインドに身を潜めるといっても、相手次第です。三脚の後ろに隠れた(隠れられるわけない!)だけで意外と気を許してくれることもあるかと思えば、ブラインド(多くは布製のテント)にカムフラージュの枝葉で覆って擬装しないと話にならなかったり、それはもう千差万別です。最初から苦心惨憺して擬装を施し、やっと造りあげたブラインドに潜んで本懐を遂げ、やったやったと這い出してみたら、奴さん全然逃げなかった、などといった笑い話もありそうです。先ず相手の警戒の度合いを計り、それに応じたモノを設計(?)すれば良いわけでして、簡単なもので済ませられればそれに越したことはないのです。撮影現場は平坦で何も無いということのほうが少ないのでして、これぞブラインドの決定版といったものはありません。その場で調達できるものは、それこそゴミでもなんでも利用するくらいの方が手っ取り早くて楽です。しかし、場所と相手によっては、ブラインドの材料を運び上げるだけで何日も掛かる、なんてこともあるそうです。大型の猛禽類などの繁殖の撮影話などを読むと、そういった苦労と時間を要する例が実に多いし、多少の誇張があるとしても他人の苦労話は面白いと思えます。長時間の待機を余儀無くされることも多く、無理な姿勢はやがて苦痛になって撮影意欲に直接響きますから、あるていどの大きさ(広さ)は確保したいものです。基本的には定員一名なのですが、気の合う仲間と一緒に入れる大きさに造れば、退屈な待機時間の無聊を紛らわせることが出来るでしょう。でも、話しに夢中になって、撮影のチャンスを逃す危険がありますので、やはり一人でじっくり、が基本でしょうね。退屈を我慢した甲斐があるのがブラインド撮影です。



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