鳥を撮る - (7) 山本 晃


 三脚は鳥の撮影では必需品です。そう言うと自動車の窓枠撮影と矛盾するじゃないかとお叱りを受けそうですが、撮影の自由度が全然違うので、自動車からの撮影の場合三脚は使いづらいのです。御存じのように三脚にカメラを取り付けると雲台を軸にしてレンズが回ります。自動車の中に三脚を立てると、脚が開いた分雲台の位置は窓から離れます。そうするとレンズをパンさせられる角度が三脚の前に伸びているレンズによって制約を生じてしまうのです。分かりにくいかもしれませんが、限られた開口部と長いレンズ、それに回転軸(雲台)の位置を考えれば、回転軸即ち雲台が窓から離れれば離れるほど可動範囲は狭まることがご理解願えると思います。雲台を窓に近付けて立てれば自由度は増しますが、三脚の特性としてそのような立て方をすると、雲台の回転軸がかなり傾いてしまいます。そのように立てた三脚でパンさせてみると、回すに伴って画面が傾いて困ったことになります。ですから、レンズを振り回さないと分かっている場合以外は三脚に固定しないで窓枠に乗せて撮影したほうが、カバーできる範囲が広いというメリットを生かせるのです。

 必需品の三脚なのに、随分粗雑に扱ってひどい状態のモノを頻繁に見掛けます。あんな単純な構造の道具でも(単純だからこそ)手入れをしているか、いないかで性能に雲泥の差が出てしまうのです。脚の伸縮に係わる締め付けリング、スムーズな動きを制する雲台の摺動部分。そういった肝心な部分の部品が潤滑不足を生じて、とても円滑な動きを期待できそうもない状態に放置して平気なヒトをよく見掛けます。ガサガサしてとても気になる「雲台」、思いっきり締め付けないとレンズの重さで縮んで倒れ兼ねない「脚」。購入する時に迷うほどの高額な器材をどうしてあんなに粗雑に扱えるのか不思議です。私は年に一度はバラバラに分解して、汚れた油脂を拭き取り、新しいグリースを塗布して手入れをしています。外見はハゲチョロケのひどいモノですが、機能は新品と遜色ない状態を維持しています。 三脚の「脚」は機種によっていろいろですが、全て伸ばせますよね。それにしても、いつでも、どこでも、目一杯伸ばさないと気が済まない御仁がおられるようで、気になります。同じ機種で較べれば脚を伸ばすと伸ばさないで安定性に格段の差があるのを認識しておられるのでしょうか。安定性即ち剛性は同じ断面なら長いほど低下します。可動部分のあそびも剛性を低下させます。後者は極端にガタが無い限り仕方がないとして、必用以上に脚を伸ばして撮影に臨むのは徒にカメラぶれを助長しているとしか解釈できません。レンズの前に邪魔なものがあったり、撮影上の意図でもあればともかく、ただ単に立ったままの方が楽だという理由だけで三脚を高くするのは考えものだと思います。最近はスタビライザーを組み込んだレンズも出回っており、カメラぶれを気にしなくても済むようにはなっていますが、鳥に対する威圧感も、坐って臨んだ方が少ないと思うのですが……。 道具は愛情をもって扱えば存分に機能を発揮してくれます。 - 完 -



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