ケリの不思議 - 橋本 美保 |
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「西三河的野鳥観察眼」が愛知に来て2年余り、鳥見経験も少ない私のどこに付いているのか、疑問もありますが、お気に入りのケリについて書いてみます。 東京のケリは冬鳥です。遠出して年に数回出会います。数羽が集まっていて、動くことも鳴くことも少なくて、おとなしい、そして、地味な立ち姿から飛ぶと羽が美しい、そんな印象だったでしょうか。 いうまでもなく、西三河のケリは留鳥です。年中、ここそこの田畑にいっぱい居ます。でも、第一印象はこれまでと大きく違っていました。とっても気が強くて、うるさくて、ちょっと怖い。いまになって思うと、雛に気が付かずに近づき過ぎて威嚇されていた、つまり、ケリの親が一生懸命に雛を守っていたのです。雛との距離や雛の成長程度によって、親の鳴き方に違いのあることが分かってから安全?に見られるようになりました。 抱卵前は縄張り争いがあって、そのときはよく鳴きます。営巣場所が決まると、小石をつまみ出すような仕草をします。なかなか素敵です。雛を守るときは威嚇だけでなく擬傷もします。それに何といっても、雛の可愛らしさ! モコモコの体、弱々しい様子などなど。よくよく見ていると、ケリにも気の強いのと気の弱いのがいます。可愛い雛がいるのに人が近づくと、自分がすぐに逃げます。こんな母親で大丈夫かと心配していましたが、夫がしっかりしていて(わが家と同じという声が横から聞こえます)、隣の夫婦も気が強くて、無事に雛は育っていきました。でも、うまくいかないことも少なくありません。営巣中に田圃や畑の状況が変わって、壊れた巣の跡でいつまでもウロウロするカップルは本当に気の毒です。 そういえば、雛がいる間は巣の周囲の比較的狭い範囲にいましたが、1か月半くらいで親も幼鳥も縄張りから、どこかにいなくなってしまいました。それから、ケリが群れてダンス(?)をするのを何回か見ました。5羽以上が同じ田圃に集まって、一斉に首をあげてケッケッと鳴きながら同じ方向に走り、端まで行くとまた同じように鳴きながら戻ってくる、そんな行動を繰り返します。 いま、気になっているのは、幼鳥はかなり大きくなっても目の色が黒ですが、親と同じ赤にいつ頃変わるのかということです。 個体の識別がきちんとできるようになれば、もっと色々なことが分かるだろうと思っています。 ケリの不思議がもっと増えるかもしれません。 |