絵本に探す鳥たち - 野田 信裕


 さて、今回は「鳥」の本で楽しみましょう。
当会には鳥の本については、一家言をお持ちの先輩諸氏が数多くみえます。その、幾多の価値ある鳥の本については、改めて各氏からお話を戴く機会があることでしょう。
では、今回は絵本で探鳥なんていかがでしょうか。絵本なんて子供たちのもの。なんて、認識が甘いあなたへ。
*「北から南へ」作 N・スラトコフ 絵 N・チャルーシン 1992 福音館書店
*「かしわばやしの夜」 作 宮澤賢治 画 小林敏也 1996 パロル舎
*「こたんこるかむい」 絵・文 おの ちよ 1989 至光社
上の3点の絵本を紹介します。

 まず最初の1冊目は70余種の野鳥が登場する絵本です。それは「北から南へ」。 この絵本は掲載種数でここへ挙げたのではありません。エリマキシギのダンスやノガンの羽根の軋む音まで聞こえてきそうな「絵」や色のついた墨絵を思わせるタッチで旧ソ連の自然を描いた「絵」に目を奪われて手に入れたものです。 手持ちの図鑑では伺い知ることの出来ない鳥たちや、広大なツンドラなど、いつかは探鳥に訪れたくなってしまいます。

 「かしわばやしの夜」、「こたんこるかむい」は、2冊ともキャストとしてサブ、メインの差はありますがフクロウが登場します。そして前書とは、趣の違う絵本です。「かしわばやしの夜」は宮澤賢治の作品の中に登場するフクロウが描かれていますが、この画家のフクロウの絵が気に入りました。 他にもフクロウが登場する宮澤賢治の作品があるとのことですが、絵本として出ているならば、ぜひ見てみたいものです。

 「こたんこるかむい」は題名からもわかるとおり、シマフクロウとアイヌのお話です。 アイヌとカムイについては、説明するまでもないほど、皆さんご存知かと思いますので省略させてもらいます。が、私の心に残った絵本の中のフレーズをひとつ紹介させて下さい。カムイがひとびとを見守り育てていく中。コタンコルカムイ;「わたしがかりをおしえる」「わたしのむねにうて…」シマフクロウをとおして、アイヌと自然との関わりが簡潔に描かれた絵本です。 この絵本も墨絵タッチで描かれており、墨で描かれたようなシマフクロウと赤い“点”で示された人の「絵」はとても象徴的で、特にお奨めの絵本です。

 絵本は子供たちのもの。絵本に載せる鳥や自然は私たちが残していかなくては。

あなたのお奨めの鳥の絵本を教えて下さい。