八重山ブラリ旅(4) 山本 晃


★ 3月29日
 日本列島の西の端の西表の朝は遅いですね。宿の朝食のボリュームに溜め息をつきながら何とか食べ終わり、昨日見つけたズアカアオバトが餌付いている公民館のガジュマルの大木に向かいました。二羽餌づいていて居食いの生活を謳歌しているのですが、何しろ鬱蒼と葉の茂った常緑樹、体の一部しか見せてくれません。葉陰にチラチラ姿が見えているので嫌が上にも写欲をそそられ、殆ど一日ガジュマルの周りに張り付いて過ごしてしまいました。「棚ぼたカメラマン」にしては大変な根気ですが、こういうことも時にはやらかします。ウロウロ走り回ればそれなりの遭遇が期待出来るのですが、気分次第では徒労のリスクを敢えて冒すこともあるのです。何のことはない、結果が良かったので思い出に花を添えることが出来ただけなのですが…。



 宿から近いので夕方にまた来てみようと、本来のあてども無いドライブを始めました。トロトロ走りながら見た感じではやはり鳥の姿は少なく、ヒヨドリ、メジロ、シジュウカラ、シロハラ、シマアカモズ、リュウキュウサンショウクイがほとんど。 シロハラクイナはシャイな個体ばかりで「写真の距離」に近寄らせてくれません。写真を撮ることが如何に粗暴な行為なのか、いまさら認識を新たにしても何も変わりませんが、無為に時間を浪費するのは苦痛でしかありません。そんななかで「逃げない鳥」カンムリワシは取り敢えずファインダーに大きく入れて見られるだけでも楽しい鳥です。贅沢にもカンムリワシを間近に見ながら遊んでいたところ、さかんに鳴いていた個体が飛び立って場所を変えました。良く鳴くのでオスだろうと考えていたのは大間違いで、移動先で別の個体が飛んで来て上に乗りました。常識的に考えていたワタクシの先入観は逆で、遠くで交尾するペアに自分の不明をなじりながらシャッターを切りましたが遠すぎて写真は「ペケ」でした。読みが外れると「棚ぼた写真」は悲惨です。そんなことは百も承知でやっているのですから、愚痴るのはみっともないのですが、誰も見ていなくても自分を慰めるために愚痴ってしまいますね。可哀想なものです。



 「ほかに鳥は撮れないのかよ!」と半ばヤケ気味で車を運転していると、道端でリュウキュウサンショウクイの声。急停車して見ると道路沿いの木にとまってさかんに鳴いています。きれいな鳥で白と黒のコントラストは最高ですね。声も上品ですし姿も気品に溢れています。



 今日のところはこんなものでしょうか。東シナ海の水平線に落ちる夕日を見たいのですが、夕日を見てから大原まで帰ると相当飛ばさねばなりません。生きものにやさしい観光客はゆったりとしたスケデュールを旨としますので早い時間の帰還を心掛けます。何のことはない、早く帰って泡盛を飲みたいのが本音だったりして…。
 今夜もコノハズクの鳴き声をマクラに眠りに落ちることになりそうです。


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