八重山ブラリ旅(5) 山本 晃


★ 3月30日
 明日は帰りの行程でいっぱいなので、今日が鳥見の最終日。あっという間に過ぎてしまう日程はいつものこと。今日こそはと力んでも走り回る場所に大した変化はありません。昨日見たギンムクドリとヒメチョウゲンボウらしき鳥影が気になって島を一巡することにしましたが、再訪しても居てくれる保証はありませんね。道路が未発達なので追いきれず、悔しい思いをさせられましたが、西表島の魅力は何かと当たり前のことを考えれば自然と諦めの境地に入れます。
 昨日いたクロツラへラサギはもう居ませんでした。若い個体だと思うのですが、同じくらいの潮位の時に覗きに行ってもダイサギだけが残っていました。



 サトウキビ畑の広がる農道で方向転換しようとしたら、草に覆われた側溝にタイヤを落して立往生!どうしようかと思案に暮れていても仕方がないのでジャッキを取り出して脱出を試みていたところ、いきなりの豪雨。車は無事脱出出来たもののあっという間にずぶ濡れになってしまいました。宿にとって返して濡れた服を着替え、気を取り直して再出発。さっきの雨は何だったんだという天気の回復ぶり。一路(ウロウロと)白浜へ。ずぶ濡れで座ったシートが雨水を吸っていて気持悪いのですが、まあ誰も見ていないのでズボンのお尻が濡れて色が変わっていてもお構いなしです。白浜の少し手前の水田地帯で珍しく若いカンムリワシがいました。排水溝に飛び降りたので何か捕まえたなと車を寄せて待っているとカエルをくわえて畦に上がってきました。小さなカエルなので丸呑みするかなと見ていると、内臓だけつまみ出して食べ始めました。こういう情景はあまり近くで見るものではありませんね。内臓を引き出してスレンダーになったカエルを結局は丸呑み。最初からそう出来ないのかよ!。内臓は先に賞味するのがカンムリワシの食文化なのかもしれません。カエルを丸呑みしたあと畦でボケタンとしているので、飛んでくれとレンズを持って車外へ。車だとあれだけ寄らせてくれるのにドアから一歩踏み出すか出さないかで、すっ飛んで行ってしまいました。「バーロー!」と思いど通りの飛翔をしてくれないので悪態をつく始末。



 西表島もこんなものでしょうか。少し手応えに物足りなさを感じますが、まあ日常を離れて亜熱帯の島の魅力を堪能できたので、旅費などは別にして久しぶりの精神的な贅沢を満喫することができました。訪れるたびに道路が良くなり、これ以上開発して欲しくない気持が募りますが、地元の方々は今のところ大規模開発には乗り気ではないようです。しかし、いつまで原生の自然と人間の生活がバランスを取っていられるか予断は許されない状況かもしれません。今のところ住民の良識が勝っていますが今後どうなっていくか、微妙なものを感じます。開発を全面的に否定することは簡単でしょうが、島民の生業に犠牲を強いる権利はよそ者の私にあるかどうか自信はありません。

 明日は現実生活への回帰の日。いろいろ考えさせられた八重山を後にします。 ― 完 ―


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