テキサス探鳥記(1) 山本 晃


 2005年8月10日、開港半年の真新しい中部国際空港を後にし、一路ヒューストンはジョージ・ブッシュ国際空港へ。約17時間15分(デトロイト乗換1時間40分)の長時間フライトは大変な苦痛です。エコノミーの窮屈極まるシートはビジネスクラスの快適さを知ってしまった体には拷問に近い責め苦を強いるのです。今回の旅はコーディネーターのSTさん、永年勤続ヤッター!のTKさん、外国も日本もお構い無しのSYさん、英語どうしよう…のOYさん、私だって女よ!のSUさんと私、山本を加え、6人の大集団であります。8月16日までの「あ〜だこ〜だ」「ワイワイガヤガヤ」の旅の始まりです。

 ジョージ・ブッシュ国際空港までの長〜い窮屈な辛さからようやく解放されたのも束の間、預けた荷物を受け取る段になって予期せぬ問題が発生。OYさんのスーツケースが「行方不明!」。SUさんの三脚も一緒に「ドロン!」。SYさんのスーツケースが「大破!」(安物だから無理もないという意見もありましたが)。ノースウェスト航空へ掛け合うため、英語の堪能な米元さん(テキサス在住。STさんがインターネットでコンタクトをとり、ガイドをお願いした方です)の存在がどれほど心強かったか…。全くヤル気の無いウドの大木のテキサス野郎(トラブル担当)に取り敢えず話を付け、沈み勝ちな気持ちを奮い立たせて予定行動へ。翌日OYさんのスーツケースとSUさんの三脚が発見され、SYさんのスーツケースも弁償(代替品を用意)して貰える目処が立ち、心置きなく鳥見に専念することが出来ました。米元さん、ほんとうにありがとう。しかし今思えば、どんなトラブルをも蹴飛ばして鳥見に走るであろうメンバーではありました。

 空港からガルベストン島まで米元さんの運転で移動。ヒューストン市内の道路は速度制限などという押し付けがましいものがなく、案内板をじっくり読み取る時間さえ与えられません(パッと読めない方が悪いに決っていますが)。我々だけで走ったら間違い無く混乱し、迷っていたでしょう。自分がハンドルを握っていたらと想像しただけで冷や汗が流れます。郊外へ踊り出ると、テキサス州南部に広がる広大な平坦地に驚嘆しながらのドライブ。時間と空間(距離)の感覚が日本のそれとは全く異なるのを厭というほど実感させられました。空に浮かぶ雲と、植物に覆われてはいるが真っ平な大地以外は何も無い広漠とした二次元的な空間。ガルベストンに到着した頃、陽は大分西に傾いていましたが、時差ボケを味わう暇も無く行動開始。ホテルの前に広がるメキシコ湾の海岸は平日の夕方とあって人影もまばら。よく見ると、ワライカモメやシギ・チドリらしき姿も。

 ウィレット(ハジロオオシギ)だ!」という声に双眼鏡を向けると、オグロシギに似たやや大型のシギが打ち上げられた海藻の周りで餌をついばんでいます。早速カメラを担いで撮影に及んだのですが、かなり西日になった日差しに因る「色温度」の片寄りが頭をよぎります。デジタルカメラはそんな心配は不要なのだ、と思い直すのに少し時間を要したのは、今になって思うと滑稽です。ひとしきり観て撮って、鬱憤が晴れた一行は少し早いディナーへと、ケバケバしい意匠のレストランを物色しながら彷徨うのでした。選んだレストランは外観を裏切ることなく、百歩譲っても日本人の味覚と相容れないメキシカンの影響濃厚、且つボリュームだけは満点なディナーでした。毎日こんなに喰えば太るわナ〜。

 ホテルはアメリカ南西部にかなりの店鋪を展開している老舗のようで、その名も「ベスト・ウェスタン」。私達が泊まった建物はかなり古く、クーラーの騒音には恐れ入りました。暑いので止める訳にもいかず、温度の設定によっては起動停止の度に凄い音がするので連続運転にしたいくらいなのですが、そうすると寒くて叶いません。インバーターによる省エネなんていう発想から完全に取り残された「遺物」にお目に掛れました。明日は米元さんが本格的に案内して下さるというので、睡眠不足なんて「体たらく」は避けなければ……。




ガルベストン周辺の地図


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