テキサス探鳥記(6) 山本 晃


 8月14日 米元氏がヒューストンから駆けつけて下さり、昨日買い込んだ食料と大量の水を積んで出発です。何しろ暑いので冷たい水は何ものにも代え難く、現地で買った発泡スチロールの箱にホテルの製氷機の氷を詰めて走り回ったのです。1日で2リットル以上飲んだのではないでしょうか。Bolivar半島に渡り、少し小高い、其の名もHigh Islandという立派な森のある一画に行きました。小高いと言っても海抜にして10m位でしょうか、大きな木が生えているので高く見えますが、木を全部切ったら情けないような丘になってしまいそうです。 Boy Scout Sanctuaryという時季が時季ならかなり楽しめるという森に入りましたが、鳥の姿が少ない上に蚊がたくさんいて、手足と言わず顔と言わず滅茶苦茶に刺され、這う這うの体で引き返しました。夏鳥の渡りの季節は素晴らしく、水場を造ったり薮を切り開いたりしてバードウォッチャーに便宜を図るそうです。大きな木造の観察小屋もありましたが、シーズンオフの今は何だか寂れた感じが漂っていました。期待を裏切って申し訳なさそうな米元氏は、良い季節に再訪して下さいという気持ちが表情に滲み出ていました。自然の豊かさを満喫出来ただけでも良しとし、気持ちを切り替えて、次なるAnahuac National Wildlife Refugeを案内して頂きました。

 11日にも来ましたが、今日はポイントが少し違います。広い草原(牧草地なのだろうか?)の中を延々と続く一本道。時々エンビタイランチョウが止まっていますが、若鳥ばかりで「燕尾」のスマートな姿は見られませんでした。この鳥はテキサス州を中心にした狭い分布で、アメリカでは「○○州の鳥」なんて決める習慣があるのか知りませんが、テキサス州の鳥はこれに決まり!です。色合いもなかなか渋く(テキサス野郎にこの渋さが分るか疑問が残りますが)、ステキな鳥です。

 途中「アメウズとコモンとマキバシギの休耕田」を覗いてみましたが、晴天が続いて水が干上がり始め、鳥が遠くなっていました。さしもの安定した晴天もどうやら大気が不安定になり始めたようで、積乱雲が林立しています。地平線が望めるような場所では積乱雲が雨を降らせながら移動して行く様子が遠望でき、大気の擾乱の様子が手に取るように分ります。これでトルネードでも発生してくれたら完璧なのですが、トルネードを期待するのは少し不謹慎でしょうね。空模様を見ながらのドライブは楽しいもので(私だけですが)あっという間にAnahuac National Wildlife Refugeへ到着です。

 ビジターセンターで米元氏がチェックインして下さりエリア内へ。驟雨が頻繁に通るのですが、幸い車で回れるので助かりました。土手状の道がぐるっと造ってあって両側は湿地。歩く位の速度でゆっくりゆっくり走ります。一方通行なので対向車の心配はありません。湿原性の植物が繁茂していて見通しは利きませんが、道路を造るのに土砂を掘り上げた水路が道沿いにあるので道路際は水面です。アメリカムラサキバン、バン、アメリカオオバン、ハシナガヌマミソサザイ?、ハゴロモガラス、などが見られ、途中木造の見晴らし台があったので昼食を兼ねて大休止。目の前に広い水面が広がり、スイレンやハスが水面を覆っています。誰かが「コヨシゴイ!」と叫びました。ハスの葉が林立していてなかなか分りません。やっとのことで全員見られましたが、小さい!ヨシゴイより小さいのです。

 さらに進むと木道の観察路があったので、雨を気にしながら歩きました。木道の上に何やら動物の糞がやたらにあるので尋ねたところ、アライグマだろうとのこと。甲殻類の殻がたくさん入っているものがありました。木道の終点で一休みしているとアカハシリュウキュウガモが美麗な姿で飛来し、スイレンの仲間の花がたくさん咲いている水面に降りましたが、水草の陰に隠れて見えなくなりました。見るとスイレンの中にクロエリセイタカシギが歩いており、大変美しい光景でした。


 木道を引き上げてくると、駐車場の際の水路にかなり大きなアリゲーターが目と鼻(顔)だけ出しているのを発見。黒いワニ革は凄みも充分で全体の大きさが分らないだけに余計不気味です。及び腰で覗き込む面々の腰の引けた格好が傑作でした。

 一周してビジターセンターに戻ると、花壇の花にノドアカハチドリがブンブン飛び回っているのに気が付き大騒ぎになりました。全長10cm。飛び回る姿はまるでスズメガ。鳥とはとても思えません。こんなに小さくては長い夜に体温を下げて「冬眠」しなければエネルギーの収支が大赤字になってしまうのも頷けます。自転車操業の鳥なのだそうです。


 帰路、見納めにHorseshoe Marshで小1時間楽しみ、17時45分頃、毎日乗ったフェリーでガルベストンに戻りました。フェリーの上空には7羽ものアメリカグンカンドリが飛来し、米元氏もたまげていました。まるで我々の帰還を見送っているかのような光景に見えたのは、やはり考え過ぎでしょうね。




ガルベストン周辺の地図


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