テキサス探鳥記(4) 山本 晃


 8月12日、今日は何曜日だ? ま、いいか。パンとシリアルにコーヒー、オレンジジュース、牛乳の食べ放題、飲み放題の朝食をホテルで済ませ、ハーツの営業所へレンタカーを受け取りに行きました。Ford Expedition(8人乗り)。テキサス野郎の体格から私のドライビングポジションにシートを直すのに四苦八苦(高級車は簡単にシートを動かせない「分らない」)。私の脚をもってしても、そのままではブレーキペダルやアクセルペダルに届きません。なんとか走り出して「右側通行モード」にすんなり切り替わったのは我ながら見事。あのサイパンで初めて右側通行したときの不安と戸惑いが嘘のようです。ホテルに取って返してみんなをピックアップ。最後部の座席の乗り降りが少し不自由でした。

 どこへ行くか、全員一致でHorseshoe Marsh Bird Sanctuaryへ。ヒメハマシギ、アメリカヒバリシギ、ヒレアシトウネンが間近に見られる魅力は皆同じのようでした。


 鳥は昨日と殆ど変わりません。私はお腹の調子が急を告げ始め、慌ててフェリー乗り場のトイレに走ったのですが、パニック状態なので進入路を間違えてしまい、警察官の見ている前で分離帯をエイヤッと乗り越えてトイレに駆け込みました。警察官は窮状を察してくれたのか、とんでもない運転をする東洋人を黙認してくれたようです。一件落着してトイレから出てくると、例の警察官がニヤニヤしながらこちらを見ていたので、思わず会釈をしてしまいました。

 11時近くまで観たり撮ったりして移動再開。途中雑貨屋へ寄って食材を調達。1人は必ず車で留守番。というのも「バンクーバー事件」で警戒心が骨の随まで染み込んでしまっているからです。尤も拳銃を突き付けられたら「どうか、命ばかりは…」となるでしょうが。
パンやらハム缶やら水などを買い込んで出発です。TKさんとSYさんは早速ビーフジャーキーをかじり始めました。知性も品位もかなぐり捨てて「わたくしにも頂けませんか…」

 広い牧草地を走り続けるのですが、牛の姿は滅多に見られません。たまに薄茶色の牛がいますが、随分スレンダーです。もともと草食の動物ですから贅肉など無いのが本来の姿なのですが、不自然に穀物などを多量に与えて肥育された牛を見慣れた眼には何だか痩せこけた哀れな姿に見えてしまいます。

 また、来てしまいました。アメウズとコモンとマキバシギの休耕田に。素晴らしい晴天が続くので、一晩で鳥が居なくなってもおかしくはないのですが、殆ど変化は見られませんでした。変わったのは6人の「気持ち」で、まだ沢山居ることを確認してしまうと何となく「納得」して力が抜けてしまうのは妙な感じでした。

 抜けてしまった力を持て余して(?)ブラブラしていると水路の中に何か泳いでいるのが目にとまりました。覗き込めば何とアリゲーター(ワニ)の赤ん坊。30センチ位の子供のワニが7匹ほど水に浮かんでいました。こんな狭い水路に…。何処かに親ワニが潜んでいるのでは?怖いのと見たい気持ちが複雑に働きます。

 昨日の興奮は何だったのか。二番煎じでは感動も弱まり、代わりに空腹を意識しはじめました。「色気より食い気」といったところでしょうか。外人(当たり前)のバードウォッチャー夫妻が、少し行くと良い場所があると教えて下さったので、昼食を食べに行きました。川べりに木のテラスがこしらえてあり、眺めも良いのでそこで粗末な昼食を取りました(河原乞食同然)。川といってもどっちが上流なのかさっぱり分りません。流れが殆ど無いので細長くなければ池だと言われても納得してしまうでしょう。ボーッと川面を眺めていると鳥の声。双眼鏡の視野に真っ赤な鳥の姿が入りました。羽毛が大分くたびれて、みすぼらしいので図鑑に該当者がいません。いろいろな知識や蘊蓄を総動員して考えた結果、ショウジョウコウカンチョウ(Common Cardinal)のオスだという結論に至りました。特徴的なとんがり頭が見られず釈然としませんでしたが、総合的に考えるとそれしかありませんでした。昼食は少し満腹に届きませんでしたが、時間の関係で帰路に。

 途中、TKさんがLeeさんに「たどたどしく」教わったRollover Passという小さな河口を覗きましたが、これといった収穫はありませんでした。でも、運が良いと何かに遭遇出来るのでしょうね。そんな雰囲気は充分感じられました。

 陽も中天を過ぎ、本日の後半を何処で充実させようかと考えました。その結果、予めインターネットで入手していた地図で目星を付けていたガルベストン島のSportsman Roadへ向かうことにしました。幹線道路から分岐した行き止まりの只の田舎道で、名前の由来はついに分りませんでした。湿原の中を貫く道路沿いは民家も点在しているので、余り「原生」という雰囲気ではありませんが、オニクイナ、ダイサギ、アメリカササゴイ、サンショクサギ、ナンベイヒメウ、クロエリセイタカシギ、ダイゼン、アメリカダイシャクシギなどがいました。潮位の関係か、シギ・チドリは少し寂しい感じでした。



 アメリカヨタカが民家の庭先の杭に止まっていたのにはびっくり。今は真っ昼間です! 冬にはガン・カモや草原性の猛禽が楽しめそうな環境に思え、ほんの一時覗いただけでは、環境の365分の1以下しか見ていないことを改めて考えさせられました。


 夕食はステーキを奢りましたが、一言居士達はヤレ固いだ、味付けが大雑把だと、黙って食べることが罪悪であるかのようです。





ガルベストン周辺の地図


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