韓国探鳥記(10) 先崎 啓究


2007年1月8日
 「やっと動ける…」と言いたげな安さんのタクシーに乗り込んで、付近にあった定食屋風のお店に入る。せめて昼ごはんくらいは食べてもらおう!と思って、安さんを誘うも、お弁当持参だった…。昼飯はうどんっぽい麺に味噌風のものがかかった、じゃじゃ麺っぽい食べ物だった。辛くなくて食べやすかった。さすが郊外だけあって、食べ物の値段が半端なく安い。街中は一体どんだけぼったくられてるんだろう。

 さぁ、午後からはカワビタキを探す。ここもSGさんの記憶を頼りにぐんぐんポイントへ近づいていく。本人曰く、太陽の方向と頭の中の景色をたどったルートを記憶しているらしい。凄いなぁ。20分ほどで、数日前に見た景色に戻ってきた。今日は前に比べて風がかなり弱いから、カワビタキはまだいれば見れるはず。全員川面に目を凝らす。

 最初に声を挙げたのはまたしてもSTさんだった。「あれそうじゃない?」視線の先は、川の中にごつごつと転がる岩の上。その岩をちょこちょこと見慣れないヒタキが動いていた。「これがカワビタキなのかぁ。」全員でじわじわ近づいていく。ほぼ匍匐前進。岩や流木の死角を探して、だんだんと寄っていく。それにしても、SGさんのすばやいこと。隙を見つけるや否や、あっという間に近づいて激写している。さすが、熟年のテクニック。僕らはのんびり観察する。この個体は♀のようだ。♂は見当たらないが、随分と渋い色合いに心打たれる。下面はイソヒヨドリの♀っぽいうろこ模様に、ヒタキ特有のシルエット。グレーを基調とした見慣れない色合いと、ところどころにあるオレンジが美しい。それぞれ満足するまで観察・撮影を行い、気づけばいい時間。すっかり待つのにも慣れてしまった安さんの待つタクシーへ戻る。お疲れ様でした。一路モーテルへ引き返す。きらきらと夕焼けに光るカワビタキがいた川が印象的だった。

 うとうとしているとあっという間にモーテルに着いていた。隣にあるレストランでクロハゲ&カワビタキに乾杯!昨日よりすこし豪華な夕食。タクシー貸し切りなだけあって、とても充実していた。料理はおいしかったが、豪華な分、ちょっと値が張った。明日は本当に最終日。ちゃんと帰れるのだろうか。

 翌朝は少し遅く、9時前にモーテルを出る。安さんと安さんの仲間のタクシーがモーテルまで迎えに来ていたので、荷物と共にいそいそと乗り込む。空港へ向かう途中、安さんがおもむろに語り始めた。「あんな田舎へタクシー走らせたことない!」「1日貸し切りとは言ったが、本当に1日とは思ってなかった」「あなた方、靴泥だらけだったから、マットのクリーニングした」「車も汚れたから洗ってきた」「割に合わなかったね」冗談半分にこんなことを言われて、僕らは笑うしかなかった。
車は15分ほどで空港へ到着。安さんに写真を送る約束をして、僕らは空港へ入った。幸い今回は欠航になっていない。よかった。11:35の飛行機でようやく日本へ。

 セントレアに13:00到着して、SGさんの家に向かう。途中の駅で降ろしてもらって、名鉄で無事に帰宅。帰宅するなり、荷物を教科書に持ち替えてそのまま学校へ向かった。生まれて始めて海外から登校した。凄い時代になったなぁ。欠航から数日の激動の余韻に浸る暇もなく、強引に日常に戻される形で今回の旅行は終了した。いろんなことがあったので、初めての海外旅行の思い出は鮮明。企画してくださったSTさん、同行者のISさん、SGさん、現地でお世話になったニールさん、ナムさん、安さん、欠航はあったけど、無事に帰ってこられて、本当に楽しかったです。ありがとうございました。今度は、もっと大人になって、お金に余裕ができたら、またよろしくお願いします。 [ 完 ]




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