韓国探鳥記(9) 先崎 啓究


2007年1月8日
 翌朝、安さんのタクシーが7時前にモーテルにやってきた。いそいそと用意して出発。5人乗りのタクシーに4人がぎゅうぎゅうになって乗る。予定通り今日はクロハゲワシとカワビタキリベンジ。安さんは街からどんどん離れていくことが少し不安そうだったが、そんなのお構いなしに記憶をたどってポイントへ向かう。韓国は高速料金は安いが、ガソリンが高い、と安さんが言っていた(当時)。途中高速道路のサービスエリアで朝食。ここは無難にうどん。

 うどんは本当にハズレが少ない。安さんは「鳥を見る」という行為自体が不思議な様子。韓国で、鳥見を行うのは、研究者くらいしか知られていないらしい。僕らが「バードウォッチングします!」というと、安さんは「じゃあ、あなた方は先生ですね!」と言っていた。そういえば、初日にダルマエナガを見た公園にも鳥見の人は一人もいなかった。鳥屋に会ったのは昨日のナクトンガンくらいだ。そんな話をしながら、さらにタクシーは進んでいく。

 目的のインターを無事に降りたのはいいが、細かいポイントがわからない。付近を右往左往する。困っているとISさんが、おもむろにデジカメの画像を取り出し、写真に写っている看板に電話番号を見つけた。そうか!ナビにその番号を入力すれば近くへ行ける。早速タクシーのナビに番号を入力して付近へ向かう。ナビのゴール地点付近に、見覚えがある看板を見つけた。ここからはSGさんの記憶力が活躍。あっという間にクロハゲポイントに到着する事ができた。幸い今日は晴れていて、いい感じに写真が撮れそう。写真メインのSGさんとISさんは目が輝いている。安さんに午前中はここで待機と伝えると、きょとんとして、「こんな何もない所で昼までいるのですか?」と聞かれた。やはり僕らがやっていることは国が違えど不思議なようだ。

    
 ポイントの一番上流側から、ソウゲンワシを探しながら眼を凝らす。カメラがないSTさんを見かねたISさんと周囲(なぜ!?)がISさんのサブ機が余っていたので渡す。とりあえず写真を残すことができたが、これを期にSTさんは一眼にはまってしまうことになろうとは・・・。それはそうと、このポイントは本当にクロハゲワシだらけ。木のてっぺんから、岩の上、さらに上空にも、ぽつぽつとクロハゲワシの姿が見られる。どれを撮ろうか迷う余裕すら持ちながら、それぞれ思い思いに写真に撮ったり、観察したりして過ごす。

 一番高いところから下の谷を見下ろすと、カラスが騒いでいることに気づいた。なんだろう?と思って見ているとソウゲンワシが颯爽と逃げていった。「出た!」と言った時にはもう姿が小さくなっていた。でも全員に焦りはない。いずれ絶対に出てくると確信していた。しばらくのんびりした時間が続く。僕とSGさんは、ねぐらから次々と飛び出すクロハゲワシの撮影に明け暮れた。真上を飛んでいく姿は、まさに畳。その内、そのありがたみすらワシと一緒に飛んで行って、条件がいい個体しか撮らなくなってくる。年齢を見ていると、幼鳥がほとんどで、一番年が行ってる個体でも3年目。色違いの風切と、茶色味が異彩を放っている。2年目の個体はわかりにくいが、オオワシ、オジロワシと同様に初列と次列の数枚以外はボロボロ。その点幼鳥は羽が綺麗でとても目立つ。ふと、海外から日本へトビを見に来るバーダーがいたら、こんな気分になるのかな!?と思った。そして、なぜか飛躍して、日本に帰ったらトビもきちっと観察しようと思った。 しばらく平穏にクロハゲワシを眺める時間が続く。途中、記念写真を撮ったりした。安さんがください!と言っていたのが印象的だった。

 相変わらずクロハゲワシは舞っている。そんな中、唐突にSTさんが「あれ、そうじゃない?」とつぶやく。見ている方向を見てみると、確かにソウゲンワシが飛んでいた。「出た!」僕とISさんはすばやく反応して、カメラを覗く。SGさんは離れていて、聞こえそうにない。どう伝えようかな!?と思っていたら、向こうから「ステーップ!!」と言いながら走ってきた(笑)

 ようやく青空の下ソウゲンワシを観察することができた。前回は雪雲でつぶれて見えづらかった下面の模様がはっきり見える。下雨覆が特徴的に白く、体型はカラフトっぽいが、若干尾羽の比率が長め。ワシだけあって、文句なしにかっこいい。2度目となれば観察する余裕が出てきて嬉しい。その後もクロハゲワシやハイタカ、カケスなどを観察して過ごす。ワシの数が減ってきたなぁと思うと不思議とお腹もすいてきた。時間も午後一時前。切れのいいところで昼ごはんにする。




釜山周辺の地図

1 || 2 || 3 || 4 || 5 || 6 || 7 || 8 || 9 || 10


トップページ